第六章

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「やっときたね」  その声は、聞き覚えのある声だった。まちがえるはずもない。慌てて振り返れば、そこには雪野真白がいた。驚いて声もでない。 「君は絶対に来ると思っていたから待ってたよ。こっち」  動揺したままの颯太は、真白の後ろについていき、開いていた奥の扉から部屋に入れると、握手会の会場はそのまま残されていた。六畳くらいの広さに雛壇と、その脇には握手会をお祝いするフラワースタンドや花が飾ってあった。  雛壇の椅子に真白がゆっくり座り、颯太に向かってどうぞ、と正面に立つように案内した。 「あ……写真集発売おめでとうございます」  ようやく現状が飲み込めて来て、頭を下げると、真白が目の前に手を差し出してきた。 「朝倉颯太くんだよね?」  驚いて顔を上げる。真白が自分の名前を呼んだなんて、聞き間違いじゃないだろうか? 「あれ? 違った?」  慌てて首を横に振る。 「僕、君のファンレターはかかさず読んでいたよ。いつもイベントに来てくれてありがとう。不安でいっぱいだったラジオの録音も最前列に君がいるのが見えて落ち着いて出来た。本当に助かったよ。僕たちの活動は君たちファンに支えられてる。そして、君はいつも最前列で、僕を応援してくれていた」  これは夢だろうか、きっと夢だ。
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