第一章

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 最初に三田村を見かけたときは、派手な女を連れたリア充で、その次に見かけたときは隣に違う女を連れてるモテ男で、そしてバイト先の新人として出会って、顏が良く生まれた恩恵の、その副作用を全身で浴びている哀れなイケメンとして同情している。今日一日で、三田村恒星という人間のいろんな一面をまとめて見せられて、颯太の頭の人物データベースが上書きに上書きを重ねて、ショートしてしまいそうだ。 「さっそく呼び捨てで呼びやがって」  不思議と嫌悪感というのは抱かなかった。何より、久しぶりに同世代の男とたくさんしゃべって、男同士はこんなに気楽で楽しいだなんて、忘れていた。  今日初めて会って、少し偉そうに仕事のことで指導しただけの関係を、友達と呼べるのかは、わからないけれど、次のバイトで三田村に会えるのが楽しみな自分がいる。  なんとなく緩む頬にぐっと力を入れながら、ポケットのスマホを取り出し、日課であるアイドルの情報チェックをしながら家路を急いだ。
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