第二章

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 三田村の何も気にしてない素振りに、言いかけた言葉を飲み込んだ。  颯太は、教授から、レポートはあとで集めると聞いて、授業そっちのけで机に向かっていた。そしてその間、普段感じることのない視線を感じた。どうやら、周囲に座っている女性たちの視線の先は、颯太ではなく隣の三田村だ。さらに、この教室の大半の女性は、三田村の周辺に着席していた。  当の本人はそんな視線に気にすることなく、まっすぐ前を見てノートを取っている。むしろ動揺していたのは颯太だけなのかもしれない。 「なぁ、店長から続けるならシフト出してって言われてるんだけど、颯太に合わせていい?」 「え……それは構わないけど」 「LINE交換して」 さらに三田村はスマホを取り出す。 「う、うん」 言われるがまま、机に置いてあったスマホを手にとり、友達追加を淡々と済ませる。 「三田村くん!」  教室の入口から声が聞こえ、颯太も恒星も振り返ると、そこにはすらりとしたきれいな女性が三田村に向かって手をあげていた。 「じゃ、俺いくわ。またな」 「おう」 しばらく颯太は、三田と女性の後ろ姿を見送っていたが、手元のスマホ画面には、よろしく、と短いメッセージが届いていた。昨日から今日にかけて、誰もが知っているモテ男とLINEを交換し、呼び捨てで呼ばれる仲になった。急速に縮まった関係に、今はただ、戸惑っている。 「颯太くん、次、授業いいの?」 「あ、行く行く」 立っていた英子が声をかけてくれて、三人は次の授業の教室へ移動した。
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