第一章

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「ひゃー、疲れた!」  倒れ込むように座り、目の前のテーブルにぺたりと伏した。三田村は、初日の新人とはいえ、予想以上に使えなかった。ファミレスで大事な「いらっしゃいませ」のかけ声も小さく、その上、笑顔もない。片づけや料理を運ぶのは率先してやってくれるが、あまりにも愛想なく黙々とやるので、かえって目立ってしまう。試しにやらせてみたオーダーも、客の顔をあまり見ようとしないし、あいかわらず声も小さい。  そして、そのフォローは、すべて颯太がやった。声も大きく、愛想もいい颯太が元気よく謝罪するので客も大目に見てくれる。しかし、こんなフォローがずっと続くのは正直、勘弁だ。 「いやぁ、ご苦労ご苦労」  店長がへらへら笑いながら、控室に入ってきた。ちなみに三田村が働いている間、店長は、すべてを颯太に任せキッチンに引っ込んでいた。 「ご苦労どころじゃないっすよ……」 「だろうな。俺ならキレてる。本当におまえでよかったよ」       
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