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颯太だって何度も怒りが頂点に届きそうだった。頑張っているのならまだしも、そもそも三田村にはやる気が感じられないのだ。注意しても直さないし、うまくやろうともしない。その態度が、より颯太を苛立たせるのだ。
「……で、誰の紹介なの? どうせクビにできないんでしょ」
「さすが、颯太様は察しもいいね。そう。俺の恩師の息子なの。こないだ同窓会があって、頼まれちゃったってわけ」
時々、コネや、誰かの紹介で、店長の一存では断れないバイトや社員が来るときがある。仕事が合っていないと本人が自覚すれば自分から辞めてくれるが、こちらから辞めろとは、なかなか言えない。
「キッチンならマシかもしれないけど、あの顏はホール向きだよな」
「そりゃそうですけど」
愛想は悪くても、三田村が片づけているだけで、席の女性たちはその姿を見つめていた。確かにあの顔なら、目の保養になる。
「皿洗い終わりました」
控室に三田村が戻ってきた。その表情は曇っている。
「おう、ごくろうさん」
「店長、バイトやめさせてください」
「早っ!」
苦笑いをする店長に、颯太は立ち上がる。
「おまえさ、何が気に食わないの? ファミレスのホールは、愛想がよくてなんぼだぞ! 声も小さいし、くすりとも笑わねぇし、俺、何度も注意しただろ」
ようやく三田村は颯太を見た。
「笑いたくないし、大きな声を出したくない」
「はー? それで金もらうんだよ! それが、ここの仕事だよ!」
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