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"………っ!!"
玲奈は言葉を無くす。
山中"だった"モノは既に息をしておらず、青年が直接触れていた口回りはまるで酸でも浴びたかのように酷く爛れており、その付近の足元には無惨な遺体や肉片が幾つも無造作に転がっている。
「お、お前!一体何者なんだ!何をした!」
辛うじて一命を取り留めた教師は、腰が抜けた状態で無様に取り乱しながら青年を指差してそう尋ねると、それに対し青年はフッと微笑みながら口を開いた。
「"八乙女"、ただの通りすがり……」
八乙女と名乗った青年は、教室の惨状をグルッと見回して不意に顔をしかめるが、ふとその中で玲奈の存在に気付く。
"やめろ…そんな目で私を見るな…!!"
玲奈はすかさず目を逸らすが、八乙女は構わずそんな玲奈の方へ歩み寄ってきた。
「神は時として気紛れに悪戯をする…止まり木は見付かったかい?」
「………」
八乙女の言葉の意味が、玲奈にはやはり伝わらない。
そもそも八乙女が、どうして自身に関わろうとするのかもわからない。
「どうしてかはわからない……今君は、この騒ぎに乗じて"死んでもいい"という目をしていた」
「…ッ!!」
続く八乙女のその一言に対し玲奈は、的確過ぎる図星を突かれてしまった為に驚きを隠せず、思わず口元を手で抑えながらバッと立ち上がり、教室を後にしてしまう。
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