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それから玲奈は、我武者羅になって走り続けた。
無我夢中だった、その道中では誰かが通報したのかサイレンの音も響いて聞こえる。
"……………ッ!!"
いつしかその音も聞こえなくなる。
ふと気付くと、玲奈は何処かの山の麓の森の中に来ていた。
自身はどうしてしまったのか、どうなってしまったのか、何が起きているのか……何もかもがわからず頭を抱える玲奈の元へ、
「例えば、こんな話がある…」
「…ッ!?」
八乙女はまた姿を現した。
「宝くじを買ったとする。しかしそれが当たる確率は、その宝くじを買った帰り道に事故を起こす可能性の方が高いと言われている…」
"何……?"
「ならば買わなければいい、どうせ当たらないのだから。しかし、買わなければ可能性は0だが、買えばほんの僅かでも可能性は0じゃないと言った人物もいる」
"何が言いたいの…?"
「確かにそうだ。買って当てている人がいるから、それを夢見て買う人がいると」
やはり八乙女の話は回りくどくて玲奈には伝わらないが、構わず八乙女は続ける。
「"才能"という言葉は宝くじとよく似ている。多く買えば当たる確率は上がるが大抵当たらない、運があれば少なくても当たるし、運が無ければ多数買っても当たらない」
"………"
「努力をして何かを得ようとしても、才能が無ければ身に着かない。逆に才能に恵まれた天才は、少ない努力ですぐ身に着けてしまう……宝くじと似てないかい?」
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