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一人で語り続ける八乙女に対し、玲奈は怪訝そうに表情を歪めていた。
「おっと、話が逸れたな。つまり君は…」
"………?"
それに気付いたのか八乙女は話を切り上げ、最も言いたかった事を続ける。
「"生きる理由が見つからない、だから死んでもいい"なんて考えが過ったんだろうが、そもそも"生きよう"なんて思った事、無いんじゃないのか?」
「………ッ!」
八乙女がずっと言いたかった事が漸く伝わり、玲奈は図星を突かれたようで驚きを隠せない。
「だから放っておけなかった」
「……」
八乙女が言いたかった事……おそらく玲奈は、夢を持って理想を思い描いて高校へ進んだのだろうが、その理想と現実のギャップに絶望し、いつの間にか生きる気力を失っていたのだろうと推測。
そんな玲奈に八乙女が本当に伝えたかった事、
「"生きる理由"なんて探さないと見付からないし、探しても大抵は見付からない。でも探そうぜ、見付かるかどうかは重要じゃない、見付けようとする"過程"が大事なんじゃないか?」
「………」
それが漸く伝わり、それに対し玲奈は安堵したのか突然全身の力が抜けてその場で腰が落ち、一方で八乙女もフッと微笑みながらその向かい側でしゃがみ込む。
「名前は……"玲奈"っていうのか、いい名前だな」
そして八乙女は玲奈の名前を名札で確認すると、それに対し玲奈は無言のままコクッと頷いた。
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