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「"生きる理由"…俺はある」
「……!」
「だが、それは命懸けだ」
八乙女がスッと立ち上がりながらそう言うと、玲奈はビクッと反応する。
そして八乙女は更に続けた。
「君が住む街には"獣"がいる…だから気を付けろよ」
「………!」
「ヤツらの名は"バーサーク"、それを全部"狩る"事が今の俺が"生きる理由"……」
低い姿勢から見上げた八乙女の表情には強い決意が込められており、不意に玲奈は顔をしかめる。
"命懸け……死なないで欲しい……"
何故なら玲奈には、その"バーサーク"と呼ばれた獣の存在に心当たりがあった。
惨殺されたクラスメート、駅でも同じような事があり、更にそれ以前にもあったとニュースで言っていたらしい。
そして今回、教室での山中の奇行…だからこそ玲奈はすぐに理解した。
それが、本当の意味で"命懸け"だという事を…。
「そんな顔するなよ、俺の決意が鈍っちまうだろ?」
「……」
八乙女は、玲奈の表情のほんの僅かな変化にもすぐに気付き、励ますように玲奈の頭に軽くポンと手を置きながら笑顔を見せる。
陽の光が木々に阻まれただでさえ薄暗いこの場所で、更に徐々に暗がりが増す中、八乙女はまた玲奈の肩をポンと軽く叩き、
「今日は送るよ、帰ろうか」
「……」
それに対し玲奈は無言のままコクリと深く頷く。
そしてその道中、飛び出してきた教室の状況が気になった。
"皆…どうなっただろう……"
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