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今までクラスメート等の他人に関して全くの無関心だった玲奈が、状況が異常とは言え初めて他人に心配の念を抱いた。
そして帰りの道中、八乙女との間に会話は殆ど無かったのだが、不思議と心が安らいだ。
"楽………"
「それじゃあな」
「………」
八乙女に見送られながら玲奈は自宅の扉を開き、何もないまま別れを告げられて名残惜しく思いながらも、家の中へ入っていく。
"また…会いたい……"
玲奈がリビングに顔を出すと、両親はどちらも驚きを隠せなかった。
「お前…!!」
「あんた、生きてたの!?」
母は椅子に腰掛けた状態から勢いよくバッと立ち上がり、父は驚きのあまりに目を見開いて微動だしなくなる。
二人のあまりの驚きように玲奈もまた驚きを隠せないが、ふと二人が見ていたであろうテレビに目が行き、漸くその驚きの意味を理解した。
『今日、◯◯高校でまたも起こってしまった生徒惨殺事件……』
「…!!」
それは、玲奈が通う学校のニュースだった。
玲奈のクラスメートは半数以上が重傷を負い、内数名は死亡してしまったらしい。
生存者は病院へ運ばれ、無傷のものもあまりのショックにより精神科へと連れられるが、その何処にも玲奈の姿が無かったとして両親は深く心配していた。
玲奈は、"私は大丈夫だから"と言わんばかりの表情を浮かべながら椅子に腰を下ろすが、続くニュースの内容に言葉を失った。
それは、"容疑者"として公開された八乙女の顔写真だった。
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