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もしもこの世にも地獄が存在するなら、それはどんな光景だろうか……玲奈は時々想像する。
それはきっと悲惨で、残酷で、醜悪で…とても見ていられないだろうと思う。
それが現状ではないという事を、玲奈はたった今理解した。
きっとこの世の地獄とは、こういう光景なのだろう。
"お父さん…お母さん…………"
たった今まで"私の家"だったリビングは、凄まじい血飛沫により至る所が紅く染まり、その足元には原型のわからない肉片が幾つも転がっている。
"私が殺した……"
それがかつて両親"だったもの"だと理解するのに時間は掛からなかった。
しかし、両親を失った"哀しみ"といった感情は何故か全く沸かず、まるで別の感情が過ると同時、ある確信をする。
"もしかして私…バーサーク…?"
玲奈は自身がバーサークになってしまったという悲壮感により頭を抱え、真っ先に脳裏にあの男の笑顔が過った。
"あの人に…狩られるの……?"
自身もいずれ八乙女に狩られてしまう……そんな結論に至るまでに、時間は掛からなかった。
そして最後に玲奈は、全身の力が抜けて血の海の上でベチャッと音を起てて腰が落ち、表情を失う。
"それもありか……"
もう玲奈には生きる気力がなく、"死"を受け入れる覚悟は既に出来てしまったようだった。
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