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駅のホームは相変わらず人込みで溢れており、玲奈にとってはやはり息苦しい。
もう二年近くも通う見慣れた景色なのに、未だに慣れない環境に嫌気さえ感じる。
"もういいや……"
それにより玲奈は耐えきれず途中の適当な駅で降りてしまい、人波に流されるようにそのまま覚束無い足取りで路頭へ放り出された。
右も左も人込みで溢れた歩行者天国で信号が青になるのを待つ中、呆然と行き交う自動車の列を眺める。
"………"
ふと天を仰ぐと、頭上を幾重も交差する歩道橋が目に入り、無意識に引き込まれるようにそこへ足を運んだ。
上から眺める景色はまた違って見え、いつの間にか信号が青に変わったのを合図に入れ代わるように人込みが行き交い、暫く立ち止まって手摺に凭れ掛かりながらその光景を眺める。
"寒い……"
息は白く、両手を擦って寒そうな仕草を覗かせていると、
「太陽の凄いところは、どんな闇でも輝かせることだ」
"え……?"
突然誰かに首にマフラーを巻かれ、驚いて振り返えると、そこには八乙女の姿があった。
「どんなに暗い夜でも、太陽が昇れば必ず朝は訪れる。だからそんな暗い顔はするな」
それによる安堵感か、玲奈は堪えきれずに大粒の涙が溢れ出し、止まらなくなる。
"私…私…!!"
それに対し八乙女は優しく玲奈の頭を撫でた。
「とりあえずコレで暖まりな、明けない夜は無い」
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