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八乙女は玲奈の首に、自身が日頃から愛用している赤チェックのマフラーを綺麗に巻き直してやると、玲奈と同じように隣の手摺に両腕を置いて体重を預けながら、まるで駄々っ子をあやすような優しい口調で口を開いた。
「君は誰よりも辛い思いをした分、きっと誰よりも強くなれる。そして、本当に強い人間なら、きっと誰よりも優しくなれる」
"………"
八乙女のその一言一言が的確に玲奈の図星を突いているようで、玲奈は溢れ出した涙が止まらない。
どうしてこうも自身を理解してくれているのだろう……ふと心の中でそう思った時、
「俺は"魔法使い"だからな、君の事ならなんでもわかる。だから、俺が君の闇を照らす太陽になる魔法を掛けるよ」
"……!"
それに答えるように八乙女は言葉を返した。
そう言って八乙女は手摺から離れて玲奈と向かい合うと、パチンと指を鳴らしてフッと笑みを浮かべる。
たったそれだけのオマジナイのような事だが、しかしそれにより玲奈は不思議と全身に風が吹き抜けたかのような清々しい気分になり、幾分も気が楽になった。
しかしその直後にふと、自宅で両親を襲った自身の凶行が脳裏を過り、玲奈は頭を抱えながら発狂する。
"私…バーサークになっちゃった!!"
更に過呼吸に陥って項垂れる玲奈は、また恐怖に引き吊った表情を浮かべていた。
"私の事も…狩るの……!?"
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