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"明日死ぬ覚悟は既に出来てる"
"お願い…死なないで……"
玲奈は朝目を覚ました時、真っ先にそう思った。
何故そう思ったかはわからないが、何故か妙な胸騒ぎがし、居ても立ってもいられず急いで着替え、飛び出すように家を出る。
八乙女が何処にいるのかもわからないが、玲奈はとにかく走り出した。
一方で八乙女は、海が一望出来るブリッジの上で柵に両腕を置きながら風に当たっていた。
背後には無数の自動車が行き交い、その騒音さえ心地よく感じる程にまで気が病んでしまっている八乙女だが、ふと自身に向かって徐々に歩み寄ってくる男の存在に気付き、そこに目を向ける。
「羅染…」
「八乙女、話がある」
その男…羅染に誘導されるまま八乙女は、近くの森林公園の適当な位置で立ち止まり、そこで羅染は深刻な表情を覗かせながらゆっくりと口を開いた。
「"撒き餌"が完成した」
「撒き餌……?」
そう言って羅染が取り出したのは、10cm大のスプレーだった。
それは、バーサークウィルスを体内に宿しながらまだ覚醒していない人間が浴びると、瞬間的にバーサークへと覚醒するもので、その威力は羅染自ら実証済みだった。
その研究をし、そして完成させた羅染は、更にそれを活かすべくウィルスに感染している可能性を炙り出す為に例の遊園地の中央監視室へと訪れ、そこで手に入れた映像を見せるべくスマホを取り出す。
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