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取り敢えずの纏まりを見せた集会で、丸鼓は腕時計を覗き、顔を上げた。
「こんなもんか? あとでなんか話出たら調整すっから、気になることあったら相談して。事務所の引き出しに名刺あるからな。そんで、タケルはちょっと真剣に今後ユーヤと仕事していけんのか考えとけよ。つーわけで明日出勤したら、おまえのトコの鍵は、あーと、石塚さん、預かって貰っていい?」
置物のような石塚が、いいですよと了承に頷く。
「じゃ、石塚さんに渡して」
「……マジで、勇也さんと同居すんですか? 俺」
「ジョークに時間割くかよ、バカ。ユーヤ、おまえタケルの引っ越し手伝え」
「わかった。期限はどうする」
提案を受け入れての質問に、丸鼓は意地の悪い丸い目で、ニタリと笑った。
「ねえよ。和解するか決別するか、顔つき合わせて結論出せよ。そしたら同居解消。神聖な仕事場で他の奴に気ぃ使わせてんじゃねえってこと。まあどうにも埒あかねえなら、俺が引き取って結論出すわ」
「じゃあ、月内目処だ。早めに和解するよ」
「おう、頼むわ、逃げんなよ?」
さらりと告げられた追い討ちに、苦く笑った。
丸鼓はおそらく佐目を、次期フロアチーフに当てようと考えている。それは退職を含めた現行の契約に追従する、丸鼓の意思表明だ。
さほど分の悪い流れではない。今後に選択肢が残されている確認にもなった。
四月からは石塚に変わり、佐目の指導を引き継ぐことになるだろう。中途半端な状態では、自分の首を締めることになりかねない。
丸鼓は他に幾つかの伝達事項を確認し、最後に「来月から祝祭日定休、水曜隔週休み」を宣言して歓喜のどよめきを響かせ、時間にして二十分程度の集会をお開きとした。
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