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「……はぁ」
学校からの帰り道、大門寺光はガックリと肩を落としながらトボトボと歩いていた。
結局、今朝から刃とは話せずじまいだし、一緒に帰れもしない。
「い、いや、別に一緒に帰りたいとかそういうのじゃないから! そうしないと藍が心配しちゃうから、それだけだから!」
誰だかわからない相手に言い訳して、また肩を落とす。
「……ほんと、なーにやってるんだろ、私」
こんなのは自分らしくない。それは光がよくわかっている。
でも、どうすればいいか思い付かないのだ。
自分は蓮のように積極的でもないし、亮のようにおしとやかでもない。かといって無理に押して刃と変な空気になったら、それこそ目も当てられない。
なにせ蓮とは違い、光はほぼ毎日嫌でも刃と会話する。もし気まずくなれば自分がモヤモヤするだけではなく、今朝のように藍に心配をかけてしまう。それだけは避けたかった。
「……もう、逃げてばっかじゃダメよね」
光もわかっていた。そろそろ落とし前をつけなければならないタイミングだと。
でも、今さら告白などどうすればいいのだろう。
case1『家庭的アピール』
『刃、先に帰ったからご飯作っておいたわよ♪』
『マジかよ家庭的だな嫁にほしいわ結婚しよう!』
~HAPPY END~
「……いや、ないわね」
何故か刃の家ではキッチンに立つことは禁止されているし、刃のほうが料理も出来ることは知っている。実家など母の雷が飛んでくるレベルで無理だ。この案は使えない。
case2『既成事実を作る』
『刃、手を繋ぎましょ♪』
『マジかよ手繋いじゃったよ結婚しよう!』
~HAPPY END~
「まぁ、悪くないけど、それだとどう考えても蓮の方が上なのよね……」
かといって自分がいきなりキスなんて考えられない。この案もなしだ。
case3『素直に告白する』
『刃好き!』
『光好き!』
~HAPPY END~
「それがうまくいけば苦労しないってのよ!」
そもそも刃の気持ちがわからないからこんなに悩んでいるのだ。これでうまくいったら苦労していない。
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