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光もさすがに刃の方から誘われるとは思っておらずに困惑。そして、
「へ、へぇええええ! あんた私と出たいわけ? どうしよっかなー私も暇じゃないのよねぇ! まぁあんたが出る相手いなくてどーーーーーーーーーーしてもって言うなら仕方なーーーーーーーく出てあげてもいいけど!」
いつもの『逆愛状態』で対応してしまった。
「(あああああああああああ私のバカバカバカバカ何を偉そうにしてんのよあんた刃を誘いに来たんでしょ! そのために朝7時から寒空の下で待ってたんでしょ! これじゃいつもみたいに『じゃあいいよ』って話になっちゃうじゃないさっさと謝りなさいよ謝りなさいってばああああああああ!)」
内心、光は泣きながら自身の頭をぶっ叩くが言ってしまったものはもう訂正できない。
これではいつものように言い合いになり、話自体がお流れになってしまうに決まってる。早く謝ってこっちから誘いを──
「あぁ、どうしてもだ」
「……………………え?」
思わず光は固まった。今刃はなんと言った? どうしてもと言った気がする。
「光、俺と一緒に出てくれ」
もう一度念を押すように言われて光も言葉を失う。どういうことだろう、あれだけ酷い言われようだったのに、刃は怒ることもなく真剣な眼差しでこちらを真っ直ぐ見つめている。
「……えっと、その、刃? その、あんた、どうしたの?」
「何がだ?」
「だ、だっていつもだったら、その、だって」
「そうかもな、いつもの俺らだったら言い合いになってるだろうな。でも、今日はそうはいかないんだよ」
「……え?」
言いたいことが纏まらずに戸惑う光に対し、刃は優しく光の手を握る。
「どうしてもだ、頼む。光じゃないとダメなんだ」
「あうあうあう……!」
いつもと違う様子の刃に戸惑うことしかできない光。それに直ぐ様動いたのが、
「……じ、刃!」
蓮だった。
「おう、なんだ蓮」
「わ、私も刃を誘いに来た! 光とじゃなくて、私と出て!」
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