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「……」
「……」
気まずい。光は刃といて初めてそんな感情を抱いた。
当然とは思う。いきなりPGPに誘われただけでも驚いたというのに、そこに好意を寄せられた子の誘いを振り切ってまで自分と参加したいというのだ。
そのくせさっきから一言だって話しかけてこない。ただ並んで学校までの道のりを歩くだけ。
横目でチラリと刃の横顔を見る。いつもと同じ様子。でも、どこか真剣な表情で。
「(もぉ~……なんなのよ、いったい)」
こんなときに限って流斗も翔矢も合流しないし、亮も気づけば消えてしまっていた。2人きりの通学路。何か手持ちぶさたになって、光はマフラーを少し上にあげた。
「……なぁ、光」
「へっ!?」
無言だったのに突然話しかけられたため、光は驚いてしまう。
「な、なによ」
「いや、なんかお前変じゃないか? 朝から口数少ないし」
誰のせいだ!と言いたい気持ちをグッと堪えて、
「べ、別になんでもない。じ、刃こそ、今朝からおかしいんじゃないの? あ、朝から……あんな……」
「……まぁ、確かに俺らしくはないと思うけど、でもそうしないとダメだからな。改めてだけどさ、俺と組んでくれよ。光」
「……」
今日はやけに素直だ。そんなのズルいじゃないか。それでは、嫌だなんて言えない。
「……うん。私も、刃が良かった」
「……!」
──そんなこと、言うつもりもないのだけど。
だから今日だけは、自分も素直でいよう。せめて、今日という日だけは。
その後に言葉などなく、2人はただ歩幅を合わせて同じ道を歩いていくのだった。
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