第2話 恋の大戦争~準備編~

7/16
前へ
/268ページ
次へ
「……はぁ」  亮は近くの公園のブランコに乗って溜息をつく。  逃げてしまった。あの3人の空気に耐えられなかった。自分の場違い感。疎外感。蚊帳の外。間違いなく自分はあの2人に先を越されていると実感してしまった。  少なくとも、刃がパートナーを選ぶ際に悩む相手の候補にすら入っていなかった。当たり前と言えば当たり前だ。当たり前なのだが。 「……なんで私、いつもこうなんだろう」  いつも自分では動けず、誰かに促されて生きている。  今回だってPGPに誘うのだって美瑛の入れ知恵だし、後夜祭の時だって呼び出しを提案したのは蓮だ。  いつもいつも誰かに言われなければ動けない。自分では何も動けない。 「……もう、ヤダよ」  情けない自分が心底嫌になる。そのくせ、さっきもなにも言えずに見守っていただけ。戦うわけでも逃げるわけでもなく、ただ見ていただけ(・・・・・・)。 「……私は、私が大嫌いだよ」  膝を抱えて踞る。グシャグシャになったチラシが目に入り、ますます気が滅入った。 「そうか? 俺は魅力的だと思うぞ?」  と、どこからか急に声がかかり顔を起こすと、 「り、流斗君?」 「まぁ、光の次にって話だがな」  水仙流斗。最近お互いに思い人を告白しあった相手だった。 「ど、どうして流斗君がここに?」 「いや言っただろ。覚えてないのか? 後夜祭の日の約束」 「……え?」  そう言われて暫し考えて、 「……あ! 協力しようって話?」 「忘れてたのか、お前。自分から言い出したのに」 「い、いやー、あはは」  忘れてなどいない。それは後夜祭の日に屋上で交わした約束。冗談半分のつもりだったのだが、まさか本気にされるとも思ってなかった。 「で、でもそれがどうしたの? 何かあった?」 「あぁ。詳しい説明は後でするが、取り敢えず要件だけ先に伝えておく」  そうして流斗は左手を差し出し、一切の表情を変えずに言った。 「亮、俺と一緒にPGPに出てくれ」 「………………はい?」
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!

670人が本棚に入れています
本棚に追加