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「……はぁ」
亮は近くの公園のブランコに乗って溜息をつく。
逃げてしまった。あの3人の空気に耐えられなかった。自分の場違い感。疎外感。蚊帳の外。間違いなく自分はあの2人に先を越されていると実感してしまった。
少なくとも、刃がパートナーを選ぶ際に悩む相手の候補にすら入っていなかった。当たり前と言えば当たり前だ。当たり前なのだが。
「……なんで私、いつもこうなんだろう」
いつも自分では動けず、誰かに促されて生きている。
今回だってPGPに誘うのだって美瑛の入れ知恵だし、後夜祭の時だって呼び出しを提案したのは蓮だ。
いつもいつも誰かに言われなければ動けない。自分では何も動けない。
「……もう、ヤダよ」
情けない自分が心底嫌になる。そのくせ、さっきもなにも言えずに見守っていただけ。戦うわけでも逃げるわけでもなく、ただ見ていただけ。
「……私は、私が大嫌いだよ」
膝を抱えて踞る。グシャグシャになったチラシが目に入り、ますます気が滅入った。
「そうか? 俺は魅力的だと思うぞ?」
と、どこからか急に声がかかり顔を起こすと、
「り、流斗君?」
「まぁ、光の次にって話だがな」
水仙流斗。最近お互いに思い人を告白しあった相手だった。
「ど、どうして流斗君がここに?」
「いや言っただろ。覚えてないのか? 後夜祭の日の約束」
「……え?」
そう言われて暫し考えて、
「……あ! 協力しようって話?」
「忘れてたのか、お前。自分から言い出したのに」
「い、いやー、あはは」
忘れてなどいない。それは後夜祭の日に屋上で交わした約束。冗談半分のつもりだったのだが、まさか本気にされるとも思ってなかった。
「で、でもそれがどうしたの? 何かあった?」
「あぁ。詳しい説明は後でするが、取り敢えず要件だけ先に伝えておく」
そうして流斗は左手を差し出し、一切の表情を変えずに言った。
「亮、俺と一緒にPGPに出てくれ」
「………………はい?」
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