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「……はぁ」
失敗した、蓮は素直にそう思う。
あそこに光がいることも想定外だったが、それよりも想定外だったのは、刃が自分の前で光を指名したことだ。
あれではこちらが口を挟む余地がない。どうやっても勝てない。
刃にどんな心境の変化があったかはわからない。でも、少なくとも自分には良くない変化だ。
「……負けない、負けない」
自身に言い聞かせるように呟く。そうだ、ここで諦められるくらいなら苦労はしていない。
「……絶対に、負けない!」
蓮にはまだ策があった。できれば使いたくなかった最後の策。でも、もうそれしかない。
このPGPは幸いなことにカップル限定のイベントではない。
カップルが頂上に到達するとそういう言い伝えがあるというだけで、実際は1人で参加して腕試しにくる者もいるくらいに内容は厳しいものなのだ。
つまりは、蓮であっても1人で参加は可能ということだ。
そして、重要なことがもう1つ。頂点に立つカップルに決まりはない。
どういうことか、簡単だ。
最初に組んでいたカップルと、途中で入れ替わって別の人間が一緒に頂点に立っても、問題はないと言うこと。
つまり、競技中に光と蓮が入れ替り、頂点に立てば自分と刃が正式なカップル。テレビにも大々的に報道されるのだから、逃げ場もなくなる。
「……ふ、ふふふ」
本気になった人間ほど恐ろしいものはない。それを思い知らせてあげるよ。2人とも。
「ふふふふふふ……!」
蓮は思わず笑ってしまう。周りの人間に引かれようとも、押さえることなどできない。
これで私の勝ちと、蓮は静かにほくそえむのだった。
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