第14話 ノワール

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「……潮時、か」 「……逃げる気か」  鎧亜と対峙していたフードの男もその異変に気づく。時間が来たらしい。 「……また次の機会にしよう。君とはいずれ、決着をつけるはずだ」 「逃がすか!」  鎧亜の1太刀をギリギリでフード男は躱す。その時、目深に被ったフードが少しめくれて鎧亜はその顔を見た。 「……!?」 「さらばだ」 ──シュン、と一瞬で姿を消してしまった。気を取られたその一瞬に。 「……どういう、ことだ」  今見えたあの男の顔。あの顔は、間違いなく……。           ✩   「ガアアアアアアア!!!」 「……なんだ!?」  ノワールの様子がおかしい。ペンダントを周りから吸収しているようだが、力を制御できていない。 「あ、あいつら、まさか私を利用して……ガアアアアアアア!!!」  姿もみるみるうちに禍々しく変わっていく。これではまるで……。 「……羅刹天」  そう口にした凪の体が小さく震えた。そう、黒い体に赤い瞳、狼のような様相に黒い翼、両手には大きな2つの大剣。  少し違うが、気配は間違いなく羅刹天のそれに近かった。 「なんで……ノワールがこんな姿に……」 『グルルルル!!!』  言葉すらなくし、自分たちに向けられたのは純粋な殺意のみ。ノワールはグッと両の手に力を入れて大剣を構えると、 『グルアアアアアア!!!』  そのまま振り下ろす。凄まじい衝撃波。まともに食らったらヤバい。 「避けろぉ!」  全員が回避すると、その部分は真っ二つに割かれていた。  特待生のユウ・クリウスが作り出したこの強固なタワーの1部すら、跡形もなく。 「全員下がっていろ! 攻撃は受けるな! 『水天』!」 「「わかってますわ!」」  凪が指示し、マリル達がそれに従う。これを相手にこの人数を一気に下まで運ぶことは不可能と判断したマリル達は雲の巨人でトナカイ達を覆って守る。 「皆様、ここは『特待生(わたしたち)』に任せて逃げてください! 皆様を守りながらでは、到底戦えません!」 「……わかった。全員、1人でも下に運びながら下るんだ!」 『ガアアアアアアア!!!』  流斗が扇動した矢先、ノワールは真っ直ぐそちらに攻撃の矛先を向ける。 「この……ぐあっ!?」  止めようとした凪が右の剣だけで吹き飛ばされる。 「「『雲人(クラウディマン)』!」」 『ガアアアアアアア!!!』  ズドン、と大きな音が響き、ノワールの両腕を『雲人』が抑えた。しかし、 「くっ……!?」 「なんて……力を……!」  押し負けている。このままでは、全員まとめて潰される! 「『初紋字・爆』!」 「じ、刃君!?」  止めなくては。刃はありったけの燈気を込めて剣を握り飛び出した。  と、隣にもう1人の影。 「鎧亜!」 「『弐紋字・鮫牙(シャークバイト)』!」  刃と鎧亜はお互いの剣に燈気を込めて、 「「はあああああああ!!!」」  それを一気にノワールの空いた土手っ腹にぶち当てた。 『グルアアアアア!?』  その力にノワールの体も吹き飛ばされ、叩きつけられた衝撃で辺りに砂埃が舞う。 「た、助かりましたわ」 「気を抜くな。あれはまだ倒せてはいない」 『ガアアアアアアア!!!』  ノワールはすぐさま立ち上がってこちらに照準を合わせている。  まさかとは思いたかったが、 「無傷、かよ」  身体には傷一つ付いていない。刃と鎧亜の一撃をまともに受けたのにも関わらず、だ。
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