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「(どうする……攻撃力、スピード、防御力、どれをとっても圧倒的に負けている……どこかに、どこかに勝機は……!)」
流斗はその間にも情報を整理して勝ちの目を探すが、見つからない。
『ガアアアアアアア!!!』
『!?』
咆哮と共にこちらに真っ直ぐ突進して剣を振り上げるノワール。何かを考える時間もない。どうにか皆だけでも逃がせないか、そう思った時だった。その大剣が振り下ろされる瞬間。
──ドンッ!
『!?』
「……楽しそうな祭りですなぁ。ウチも混ぜておくれやす?」
片手で、受け止めていた。
特待生すら吹き飛ばされていたノワールの重い一撃を、その細く見える片手だけで。
「……美焔、クズネ」
世界最強の一角『九尾の美焔族』、美焔クズネがそこにいた。
『グルアアアアアア!!!』
──ズン!
ノワールはその抑えられた大剣の上にもう片方の大剣を叩きつける。単純に力は2倍。クズネの足元の地面は威力に耐えきれず砕け散るが、
「……なかなか、やね」
両腕で受け止め、砕け散った足元で踏ん張って耐えていた。
「はぁっ!」
『ガァ!?』
「そう……れっ!」
『ガアアアアアアア!!!?』
それを弾き返し、両腕が上がってガラ空きになった腹部に回し蹴り。ノワールの身体は吹っ飛んでいく。
「……す、すげぇ」
思わず呟いた刃の言葉に全員が心の中で同意する。これが、世界最強。
「……あんた達、ようやった。あとはウチに任せて休んどき。こっからは……」
ドン! とクズネの全身から燈気が溢れ出す。それがどれだけ規格外の量なのか、刃達は肌で感じてわかる。
「──ウチが、引き受けた」
『ガアアアアアアア!!!』
「解紋!」
クズネの右手が輝き、それをそのまま自らの口に入れた。
すると、クズネの身体が変化し始めた。頭には耳、髭、目元にはクマのような赤いライン、毛羽立つ腕。
そして、自らの体と同じくらい大きくて真っ白な9本の尻尾。
「……あれって、流斗のと同じ」
かつて流斗がやった『龍化』と同じ。内に秘めた『九尾』の力を解放したのだろう。
『ガアアアアアアア!!!』
「そうら!」
振り下ろた大剣に対してグーパンでカウンター。ただそれだけで、ノワールの腕ごと吹き飛ばされた。
『グル!? グルアアア!!!』
「ほうら、よ!」
すぐ様振るわれたもう片方にも同じくカウンター。両の腕が宙に舞い、衝撃波で跡形もなく消滅した。
『ぐ、グルアアア!!!』
すぐに体から生えてくる両腕。しかしノワールの動きに少し焦りが見える。
「さて、遊ぼうやないの? 怪物同士なぁ」
『ガアアアアアアア!!!』
「……半端ないな」
「あぁ」
刃達はもはや完全に蚊帳の外。もう彼女1人でいいんじゃないか?と思わずにはいられなかった。
「ともかく、これで大丈夫だろう。俺たちははやく避難を──」
「……あれ?」
と、亮が何かに気付く。
「どうした、亮」
「……皆の様子が、おかしい」
言われてトナカイたちの様子を見ると、
「ど、どうしたんだ、一体!?」
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