第14話 ノワール

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「(どうする……攻撃力、スピード、防御力、どれをとっても圧倒的に負けている……どこかに、どこかに勝機は……!)」  流斗はその間にも情報を整理して勝ちの目を探すが、見つからない。 『ガアアアアアアア!!!』 『!?』  咆哮と共にこちらに真っ直ぐ突進して剣を振り上げるノワール。何かを考える時間もない。どうにか皆だけでも逃がせないか、そう思った時だった。その大剣が振り下ろされる瞬間。 ──ドンッ! 『!?』 「……楽しそうな祭りですなぁ。ウチも混ぜておくれやす?」  片手で、受け止めていた。  特待生すら吹き飛ばされていたノワールの重い一撃を、その細く見える片手だけで。 「……美焔、クズネ」  世界最強の一角『九尾の美焔族』、美焔クズネがそこにいた。 『グルアアアアアア!!!』 ──ズン!  ノワールはその抑えられた大剣の上にもう片方の大剣を叩きつける。単純に力は2倍。クズネの足元の地面は威力に耐えきれず砕け散るが、 「……なかなか、やね」  両腕で受け止め、砕け散った足元で踏ん張って耐えていた。 「はぁっ!」 『ガァ!?』 「そう……れっ!」 『ガアアアアアアア!!!?』  それを弾き返し、両腕が上がってガラ空きになった腹部に回し蹴り。ノワールの身体は吹っ飛んでいく。 「……す、すげぇ」  思わず呟いた刃の言葉に全員が心の中で同意する。これが、世界最強。 「……あんた達、ようやった。あとはウチに任せて休んどき。こっからは……」  ドン! とクズネの全身から燈気が溢れ出す。それがどれだけ規格外の量なのか、刃達は肌で感じてわかる。 「──ウチが、引き受けた」 『ガアアアアアアア!!!』 「解紋!」  クズネの右手が輝き、それをそのまま自らの口に入れた。  すると、クズネの身体が変化し始めた。頭には耳、髭、目元にはクマのような赤いライン、毛羽立つ腕。  そして、自らの体と同じくらい大きくて真っ白な9本の尻尾。 「……あれって、流斗のと同じ」  かつて流斗がやった『龍化』と同じ。内に秘めた『九尾』の力を解放したのだろう。 『ガアアアアアアア!!!』 「そうら!」  振り下ろた大剣に対してグーパンでカウンター。ただそれだけで、ノワールの腕ごと吹き飛ばされた。 『グル!? グルアアア!!!』 「ほうら、よ!」  すぐ様振るわれたもう片方にも同じくカウンター。両の腕が宙に舞い、衝撃波で跡形もなく消滅した。 『ぐ、グルアアア!!!』  すぐに体から生えてくる両腕。しかしノワールの動きに少し焦りが見える。 「さて、遊ぼうやないの? 怪物同士なぁ」 『ガアアアアアアア!!!』 「……半端ないな」 「あぁ」  刃達はもはや完全に蚊帳の外。もう彼女1人でいいんじゃないか?と思わずにはいられなかった。 「ともかく、これで大丈夫だろう。俺たちははやく避難を──」 「……あれ?」  と、亮が何かに気付く。 「どうした、亮」 「……皆の様子が、おかしい」  言われてトナカイたちの様子を見ると、 「ど、どうしたんだ、一体!?」
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