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『いてぇ、いてぇよぉ!』
『助けて……助けて……!』
『苦しい……寒い……誰か……!』
トナカイたちが苦しみ始めている。一体なぜ? そう思った時、ただ1人だけその原因に心当たりがあった。
「……まさか、これは」
「流斗! どうしたんだこいつら! なんでこんなに……!」
「……もしかしたら、ノワールに吸収されたペンダント、あれがこいつらの命と連動しているのかもしれない」
『!?』
それはつまり、ノワールが攻撃を受けているから、このトナカイ達はダメージを受けているということになる。
もしノワールを消せば、この人たちの命ももしかしたら……。
「クズネさん! ダメです! これ以上攻撃しちゃ!」
「聞こえとったよ」
刃達の傍に降り立ったクズネ。ノワールはまた攻撃を受けてズタボロになっている。
見た目で弱っていることは明らかだ。
「じゃあ、あいつを倒す以外で皆を助ける方法を──」
「先に言っておく。諦め」
「…………え?」
「あのトナカイ達は、言ってしまえば自業自得や。自分の弱さに向き合えず、それに負けて飲み込まれたバカ共や。そんな奴らにかまけて、この脅威を見逃す訳には行かん」
クズネの言うことは、つまり、
「……アイツら共々、ノワールを殺す、ってことですか?」
「それ以外に手はない。諦め」
「そんなの……!?」
「なら聞くけどな、助ける方法はあるんか?」
「……っ!」
言われて刃は口を噤んだ。
思いつかない。自分には、なにも。
「このままこいつを生かしておけば、また黒い感情を吸って拡大し、さらに多くの犠牲を産む。お前に、その責任が負えるか? または、そうならない名案があるんか?」
「……り、流斗! なんかないのか!? なんか方法は──」
「…………」
流斗はなにも言わずに俯いている。流斗にすら解決策が浮かばないのに、自分で思いつくはずもない。
「……大丈夫や。あんた達はよくやった。やむを得ない事態だった。この責任も代償もウチが何とかする。あんた達は何も気にする事はあらへん」
「……っ!」
刃は強く拳を握る。何か、何かないのか。皆を殺さず救う方法は。
嫌だ。こんな終わり方は嫌だ。
「(助けたい……助けたいんだ!)」
どこかにないのか、どこかに、助けられる可能性。
トナカイ達の苦しむ姿が亮の目にも映る。自分の癒す力も何の役にも立っていない。
「(……助けたい、助けたい!)」
刃と亮、2人の願いが重なる時。
「「(……助けたい!)」」
『……助けたいの? パパ、ママ』
「「!?」」
2人の頭の中に流れてきたのは、『あの子』の声。
「……お前」
空に浮かぶ赤ん坊。赤ん坊は目を開けて刃達を見る。
『……パパとママがしたいなら、ぼくもてつだうよ』
「……できる、のか?」
『できるよ。だって、ぼくはパパとママの願いから生まれたから』
もし、それが叶うなら。その願いが叶うなら。
「……亮!」
「うん!」
悩みなんかない。出来ることがあるのなら、自分たちに助けられる可能性があるのなら!
「クズネさん! 俺と亮に任せてください!」
「……何?」
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