第14話 ノワール

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『いてぇ、いてぇよぉ!』 『助けて……助けて……!』 『苦しい……寒い……誰か……!』  トナカイたちが苦しみ始めている。一体なぜ? そう思った時、ただ1人だけその原因に心当たりがあった。 「……まさか、これは」 「流斗! どうしたんだこいつら! なんでこんなに……!」 「……もしかしたら、ノワールに吸収されたペンダント、あれがこいつらの命と連動しているのかもしれない」 『!?』  それはつまり、ノワールが攻撃を受けているから、このトナカイ達はダメージを受けているということになる。  もしノワールを消せば、この人たちの命ももしかしたら……。 「クズネさん! ダメです! これ以上攻撃しちゃ!」 「聞こえとったよ」  刃達の傍に降り立ったクズネ。ノワールはまた攻撃を受けてズタボロになっている。  見た目で弱っていることは明らかだ。 「じゃあ、あいつを倒す以外で皆を助ける方法を──」 「先に言っておく。諦め」 「…………え?」 「あのトナカイ達は、言ってしまえば自業自得や。自分の弱さに向き合えず、それに負けて飲み込まれたバカ共や。そんな奴らにかまけて、この脅威を見逃す訳には行かん」  クズネの言うことは、つまり、 「……アイツら共々、ノワールを殺す、ってことですか?」 「それ以外に手はない。諦め」 「そんなの……!?」 「なら聞くけどな、助ける方法はあるんか?」 「……っ!」  言われて刃は口を噤んだ。  思いつかない。自分には、なにも。 「このままこいつを生かしておけば、また黒い感情を吸って拡大し、さらに多くの犠牲を産む。お前に、その責任が負えるか? または、そうならない名案があるんか?」 「……り、流斗! なんかないのか!? なんか方法は──」 「…………」  流斗はなにも言わずに俯いている。流斗にすら解決策が浮かばないのに、自分で思いつくはずもない。 「……大丈夫や。あんた達はよくやった。やむを得ない事態だった。この責任も代償もウチが何とかする。あんた達は何も気にする事はあらへん」 「……っ!」  刃は強く拳を握る。何か、何かないのか。皆を殺さず救う方法は。  嫌だ。こんな終わり方は嫌だ。 「(助けたい……助けたいんだ!)」  どこかにないのか、どこかに、助けられる可能性。  トナカイ達の苦しむ姿が亮の目にも映る。自分の癒す力も何の役にも立っていない。 「(……助けたい、助けたい!)」  刃と亮、2人の願いが重なる時。 「「(……助けたい!)」」 『……助けたいの? パパ、ママ』 「「!?」」  2人の頭の中に流れてきたのは、『あの子』の声。 「……お前」  空に浮かぶ赤ん坊。赤ん坊は目を開けて刃達を見る。 『……パパとママがしたいなら、ぼくもてつだうよ』 「……できる、のか?」 『できるよ。だって、ぼくはパパとママの願いから生まれたから』  もし、それが叶うなら。その願いが叶うなら。 「……亮!」 「うん!」  悩みなんかない。出来ることがあるのなら、自分たちに助けられる可能性があるのなら! 「クズネさん! 俺と亮に任せてください!」 「……何?」
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