第14話 ノワール

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 2人の真剣な表情。なにか策があるのもわかる。 「……大丈夫なんか?」 「「はい!」」  もちろん、犠牲はださないほうがいい。もし、そんな手段があるのなら。 「……フォローはしたる。思いっきりやってみ」 「いくぞ、亮!」 「はい!」  刃を背中から抱いて固定し、翼を展開。 『パパ、ママ、あれに近づいて』 「亮!」 「うん!」  指示通りに飛んで一気にノワールに近づく。ノワールに触れさえすれば、どうにか出来るようだ。 『ガアアアアアアア!!!』 「まぁ、そんな簡単にはいかないよな!」  近づけば反撃が来る。そんなことは分かってる。 ──ドン! 「……あんさんの相手は、ウチがしたる!」 『グルアアア!!!』  しかし、それはクズネが止めてくれる。刃と亮は全速力で懐に飛び込み、 「はぁっ!」  刃が手を伸ばしてノワールに触れた。すると、 「……!? なんだ、これ!?」  何か黒い力が刃の身体に流れ込んでくる。これは、我気だ。 「(……これって、つまり)」 『ガアアア!!!?』  そしてその我気が吸収されると同時にノワールが苦しみ出した。おそらく、我気が吸い出されたことで弱っているんだ。 「(なら、これはどうだ!?)」 『ギャアアアアアア!?』  逆に今度は我気ではなく燈気をノワールに流し込んでやる。自分たちには薬でも、我気を力にしているノワールには毒だと思ったからだ。 「よし、効いてる! もう少し──」  しかし、そこまでわかっていて、刃は思い至らなかった。 「……ッ!? があああああああ!!!?」  それは刃にとっても、同じだということを。  刃が吸収した我気は刃の身体を侵食し暴れ回る。内側から喰われるような、想像を超える激痛。  それに、圧倒的に燈気も足りない。このままでは、逆に飲み込まれる。 『パパは……ぼくが、助けるよ』  と、少し体が軽くなる。 「……お前」 『だから、がんばって』  見ると、『天使歌声(エンジェルソング)』が出して周りに散った白い羽根が刃に集まっていた。それが刃の身体を、燈気を回復させる。  これで、まだ戦える! まだ粘れる! 「ぐっ……がああああああ!!?」 「刃君!?」  しかし、今度は燈気が集まりすぎている。刃の燈気の許容量(キャパシティ)を優に超えた燈気は刃の身体を(むしば)みはじめた。 「(このままじゃ、刃君が……でも、どうすれば……)」  そして、亮は思いつく。さっき黒亮がみつ子から我気を奪った方法を。  その方法で刃の身体の余った燈気と我気を自分に移せば、きっと……。 「……っ!」  悩んでる場合じゃない。今は邪念は捨てろ。  これは人工呼吸、そう、人工呼吸なんだ! 「刃君!」  亮は叫び声を上げる刃の口を自らの口で塞ぐ。そして、燈気と我気の吸収を試みた。 「…………ぷふぁ! な、なんで!?」  できない。刃の身体にある燈気や我気を移すことができない。一体なぜ。 『……ママ、もっと強くやらないと、ダメだよ』 「つ、強く!?」  赤ん坊の言葉に亮は動揺する。つまり、もっと深いキスをしなければ刃を助けられないということらしい。 「……っ!」  悩むな。刃を助けると決めてここにいるのだから、今はそれだけを考えろ。  謝罪も贖罪も、全てが終わったあとでいい。ただ今は── ──火野刃(あなた)を、助けたい! 「……!」  もう一度刃の唇に自らの唇を重ねる。今度は、もっと深く。もっと強く。 「……っ! …………っ!!!」  やった事がないから、舌を入れるキスがこれで合っているのか分からない。  目を開けられない。恥ずかしい。でも、そんなことは言っていられない。刃の顔を抑えてズレないようにする。 「(……! 入ってきた!)」  自分に燈気も我気も流れ込んでくるのを感じる。腹の中に激痛が走り、亮も口を離しそうになるが、 「(……『回復(キュア)』!)」  その燈気を使って身体の痛みを軽減。残りを刃の傷付いた身体の回復に使う。
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