最終話 そして、俺達は

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          ✩ 「……なるほど、それでこの2人はこんなに目が死んでるわけね」  その日の夜、病院のベッドの上に病院服で寝ていた光は納得したようでため息を吐いた。  刃と亮はまるで屍のようだ、返事がない。魂が抜け落ちているかのようで、話しかけてもまるで反応しなかった。  今日は刃と翔矢と流斗、蓮に亮に美瑛に凪と、関係者だけの見舞いに来た訳だが、さっきからこの2人だけ動かない。 「全く……これじゃ誰のための見舞いだか分からないじゃない」  どっちかと言えば、今治療が必要なのはこの2人ではないだろうか。 「大体、別に気にしなきゃ良いじゃないの。皆を助けるために必要なことだったわけだし」 「いや、それだけじゃないと、言いますか……」  今度言葉に詰まったのは、刃と美瑛だ。 「…………あんた、まさかこれ以上問題起こしたわけじゃないわよね?」 「…………いや、その」  言ったら殺される。まさか亮とキスした上に、(おおやけ)の場で美瑛の彼氏宣言しました、なんて言った日には命の保証はない。 「あ、あぁ! 何も無いぞ! 特に何も他には──」 「ちなみに、こちらが美瑛の彼氏宣言をした刃の動画だ。キス動画と合わせてグングン伸びている」 「刃君、少しお話良いかしら?(バキボキ)」 「さらばだっ!!!」 ──ガシッ! 「捕らえました、長官」 「良くやったわ翔矢君。君には賞与を与えましょう」 「有り難き幸せ」 「翔矢、裏切ったな!?」  光と変な小芝居を混ぜながら刃を羽交い締め。この手際の良さ、間違いなく裏で流斗と口裏を合わせていたに違いない。 「さて、詳しい話を聞きましょうか、刃君?」  その黒い笑みに覚悟を決め、全ての経緯を話した。 「……なるほどね。また随分と面倒なことを……」 「……面目ない」  光の前に正座する刃。これから女に告白しようというのに、別の女性とキスしたり、噂になる事案を自ら招く。どう考えても裏切り行為だ。何を言われても仕方ない。 「……ま、そういう事なら仕方ないんじゃない? 彼氏役、しっかりやれば?」 「……へ?」  なんか、あっさり許された。なにか違和感がある。 「……あの、光さん」 「何かしら、刃君」 「……それだけ、でしょうか?」 「死にたいの?」 「滅相もない!」  これ以上は突っ込まないようにしよう。そう決意した刃に、 「……アンタが言うことなら、ちゃんと信じてあげるわよ」 「……っ!」 「だ、だから、その、なんて言うか……」  驚いて顔を上げると、光は顔を逸らして指をモジモジとさせている。  見えないよう努めているのだろうが、真っ赤になっているのがバレバレだ。 「……光」 「な、何よ」 「……退院したら、お前に言いたいことがある」  可愛い。素直に刃はそう思う。  流斗にも背中を押してもらった。亮にも、蓮にも好きだと言ってもらえた。憧れの美瑛ちゃんと付き合えるチャンスすら棒に振った。  でも、後悔なんか微塵もない。それでこの思いが実らなくても、後悔はしない。 「な、なによ。急にかしこまって……」 「大事な話なんだ。真面目に聞いて欲しい。嘘でも、冗談でもない」 「……言ったでしょ。アンタが言うことなら信じてあげるって」  そう言って、光は刃に向き直って、 「……せっかくだから、楽しみにしておいてあげる!」  そう、満面の笑みを返すのだった。
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