670人が本棚に入れています
本棚に追加
どうして、と聞かれても聞きたいのはこっちの方だ。なんとも言えるはずがない。
「い、いや、だからそれを聞きたいんだって! なんでお前はあれから機嫌悪いんだって!」
「だからアンタがそうやって決めつけて言ってくるのがウザいから機嫌悪いって言ってるのよ! アンタが誰にキスされようが私には関係ないでしょ! なのになんでアンタは私の機嫌が悪くなるとか思ってるわけ!?」
「いや、お前最初っからあの時から機嫌悪いじゃねぇか! 気に食わないのはわかるけど、せめて藍の前では普通に振る舞って──」
「だからそんなことないって言ってるでしょ! そうやって言ってくるのがウザいってことに気づきなさいよ!」
「はぁ!? お前自分が怒ってる自覚ないのかよ! どう考えたって最初から怒ってただろ!」
「怒ってないって言ってるでしょ!」
「怒ってる!」
「怒ってない!」
「…………ふぇ!」
その声にギクッと肩を跳ね、刃と光がその声の主を見ると、
『けんか……やだ……』
「ふぇ……ぇぇ……」
藍が泣きそうになって俯いている。
「あ、藍、大丈夫! 喧嘩じゃないから! いつもの言い合いだから! ほーら仲良しだぞー!」
「そうそう! ほーら藍!」
『…………ほんと?』
「「ほんとほんと!」」
「……アイ!」
急いで刃と光が肩を組んでニッコリ笑顔を見せると、藍は泣き止んで笑顔で食事に戻る。
「……わ、悪かった。ちょっと言い方きつかった」
「わ、私もごめんなさい。少し、言いすぎたわ」
その後からは普通に刃と光も朝御飯に戻ったが、どこかぎこちない空気が流れていた。
そして刃の脳内に出てくるのは、やはりこの状況の元凶である彼女のこと。
「(……蓮)」
東蓮。彼女はいったいどうしてあのタイミングで自分にそんなことをしたのか。いや、そんなことはわかっている。彼女はぶつけてきてくれた。
『私は……刃が好き』
その言葉が全て。間違いなく、彼女は自分に対して好意を寄せてくれている。
ならば、自分がすべきことはひとつ、蓮に返事をすることだ。
最初のコメントを投稿しよう!