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「……まぁ、そろそろ良い頃合いだろうからな。決着をつけるには」
「……へ? 決着?」
「……翔矢、すまないが少しだけ席を外してくれるか? 刃と2人で話がしたい」
「ええで。ほなワイはゆっくりドリンク選んでくるさかい、ゆっくり話してや」
そう言うと翔矢は早くも3杯目を飲み干してそそくさとおかわりに向かっていった。
「……で、流斗。2人で話したいことって──」
「決まってるだろ。光のことだ」
そう言われて刃の肩が跳ねたのを見逃す流斗ではない。
「な、なんのことだ?」
「とぼけなくても良い。お前が蓮の告白を受けるのを渋ってる理由、それは至って簡単なことで、お前には他に好きなやつがいる、それだけだ」
「……っ!」
そう断言されて、刃は言葉をつまらせる。
「今さら驚くことじゃないだろ。俺とお前、お互いに気持ちは気付いてるしな。じゃあ何でお前は蓮への返事を悩んでいるか。普通は好きな人がいるならそれを理由にフればいい。お前がそうしないのは、俺とのことがあるからだ」
「……え?」
「お前は心のどこかでこう考えてるんだろう。『もし俺と蓮が結ばれれば、あとに残るのは流斗と光だ。俺と蓮が付き合えば、自然にあの2人を引き合わせられる』と」
「そ、そんなこと……!」
「わかってる。無意識にという話だ。じゃなかったら俺たちに相談なんかしない。少なくとも俺にはな。でも、そう思ってる以外に蓮への返事をお前が渋る理由がない」
「……」
そう言われて反論できずに刃は考え込んでしまう。そんな最低なことを考えていたのか、自分は。
意識していたわけではないが、少し納得してしまったし心当たりもある。
「お互いの気持ちを知っている故の弊害だな。そのせいで俺もお前も譲り合ってるんだ。これじゃ埒があかない」
と、そこで流斗は身を乗り出して刃に顔を寄せ、刃にしか聞こえないように言う。
「そこでだ、刃。1つ俺と勝負をしないか?」
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