第1話 恋の大戦争~序~

3/8
前へ
/268ページ
次へ
「……まぁ、そろそろ良い頃合いだろうからな。決着をつけるには」 「……へ? 決着?」 「……翔矢、すまないが少しだけ席を外してくれるか? 刃と2人で話がしたい」 「ええで。ほなワイはゆっくりドリンク選んでくるさかい、ゆっくり話してや」  そう言うと翔矢は早くも3杯目を飲み干してそそくさとおかわりに向かっていった。 「……で、流斗。2人で話したいことって──」 「決まってるだろ。光のことだ」  そう言われて刃の肩が跳ねたのを見逃す流斗ではない。 「な、なんのことだ?」 「とぼけなくても良い。お前が蓮の告白を受けるのを渋ってる理由、それは至って簡単なことで、お前には他に好きなやつがいる、それだけだ」 「……っ!」  そう断言されて、刃は言葉をつまらせる。 「今さら驚くことじゃないだろ。俺とお前、お互いに気持ちは気付いてるしな。じゃあ何でお前は蓮への返事を悩んでいるか。普通は好きな人がいるならそれを理由にフればいい。お前がそうしないのは、俺とのことがあるからだ」 「……え?」 「お前は心のどこかでこう考えてるんだろう。『もし俺と蓮が結ばれれば、あとに残るのは流斗と光だ。俺と蓮が付き合えば、自然にあの2人を引き合わせられる』と」 「そ、そんなこと……!」 「わかってる。無意識にという話だ。じゃなかったら俺たちに相談なんかしない。少なくとも俺にはな。でも、そう思ってる以外に蓮への返事をお前が渋る理由がない」 「……」  そう言われて反論できずに刃は考え込んでしまう。そんな最低なことを考えていたのか、自分は。  意識していたわけではないが、少し納得してしまったし心当たりもある。 「お互いの気持ちを知っている故の弊害だな。そのせいで俺もお前も譲り合ってるんだ。これじゃ埒があかない」  と、そこで流斗は身を乗り出して刃に顔を寄せ、刃にしか聞こえないように言う。 「そこでだ、刃。1つ俺と勝負をしないか?」
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!

670人が本棚に入れています
本棚に追加