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「……はぁ」
「……ちょっと亮。いつまで辛気くさい顔してるのよ。そろそろ立ち直りなさいよ」
桜ヶ峰のショッピングモールの一角。今時の女の子に人気の洋服を扱う店の前で1人は多くの陳列する商品に視線を落とし、1人は肩を落としていた。
「……だって」
「だっても何もないわよ。この一週間ずっとそんな感じじゃない。何があったのかも話そうとしないし、それで気分だけ落とされてたらこっちまで気分が滅入るわよ」
「うっ……」
確かにその通りだと三条亮は反省した。
確かに火野刃と東蓮のキスはショッキングなものだったが、それでも実の姉である三条美瑛には関係ない話だった。
だったら、姉に相談してみるのも手かもしれない。
確か刃は美瑛の大ファンだったと亮は記憶している。それなら双子の自分にもまだ可能性はあるはず。
それにモテる姉のことだ。男の子を振り向かせるテクニックなんかも知っているかもしれない。
「……えっと、じゃあ相談してみてもいい?」
「いいわよー。ドンと来なさい」
面と向かって相談するのは恥ずかしいので、姉に背を向けて商品を見るフリをして話を続ける。
「じ、実はね、刃君と私の友達がキスしてるのを見ちゃって、どうすれば良いのかなって……」
──ガシャーーーーン!
「!?」
亮が突然の音に振り向くと、
「お、お姉ちゃん?」
商品を手から落としたことも気にせずに美瑛は顔を真っ青にしてこちらを振り替えって、まるで池から顔を出して餌をねだる鯉のように口をパクパクさせて固まっていた。
恋の相談をしたはずなのに、まさか鯉が出てくるとは思わなかった。
「りょ、亮……それっていつの話?」
「こ、この前の桜咲祭の後夜祭だけど……」
「あ、相手って……やっぱり光ちゃん?」
「あ、ううん、蓮なんだけど……」
「ええっ!?」
美瑛はさらに目を丸くした。どうやら想定外の相手で驚いたようだ。
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