第1話 恋の大戦争~序~

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「そ、それでどうなったの!? その2人は付き合うことになったりしたの!?」  そして肩を掴んで迫る姉。まさか亮も美瑛がここまで食いついてくるとは思わなかった。 「お、お姉ちゃん、ちょっと落ち着いて──」 「これが落ち着いてなんていられないわよ! だって刃君が誰かと付き合うとかそんなの──」 「あのー、お客さま?」  と、そこで美瑛は正気を取り戻して辺りを見回す。  店内で騒いでいるだけでも目立つというのに、さらにそれが美少女2人組とくればさらに視線を集めるのも道理。  それだけで済めばまだ良かったのだが、 『ねぇねぇ、あれってもしかして美瑛ちゃん?』 『えっマジで!? 本当だ、確かにそうかも!』 『ここここ、美瑛ちゃんがここいるって!』  美瑛は今をときめく人気モデル。見る人が見れば変装していたって無意味であった。  どうやらSNSか何かで拡散されているらしく、周りに人集りが出来始めている。 「やっば、亮行くわよ! 詳しい話は後で聞くからね!」 「ちょっ、お姉ちゃん!?」 「解紋!」  美瑛は腰にある自身の収納状態のI'temに手を当て、それを解放。その手に漆黒の大鎌を出現させる。 「『弐紋字(セカンドスキル)煙幕(スモーク・カーテン)』!」  美瑛がそう叫ぶと紋字(スキル)が発動、美瑛の体と手を繋いでいた亮の体が煙となって宙に消える。  こういうときは自分の『煙』の属性は非常に重宝すると言うものだと美瑛は自身を誇りつつ、今は別のことで頭がいっぱいだった。  それはもちろん、火野刃のこと。亮の手を引きながら美瑛は思考を巡らせる。  そんなに話したわけではなかったが、蓮はそんなにグイグイ行くタイプには見えなかったから油断していた。このままではまずい。 「……まだ、私の気持ちだって整理ついてないんだから!」 「お姉ちゃん、私自分で走れるから! だから引っ張らないでぇ~!?」  その小さく呟いた美瑛の言葉を聞き取る余裕など、亮にはないのだった。
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