unexpected change

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「え、葉山くん? 勿論、大事な友達だよ? でも別に好きとかじゃ……」 「言い方を変える。葉山と友達になったのは、なんで?」 「それは……葉山くんは優しいし、いい人だから。そんな理由で男子と友達になっちゃいけない?」  心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。その先を聞きたくなかった。  葉山と萌木のツーショットを見守る支倉の横顔を思い出すと尚更、今の支倉の表情を想像するだけで腹の奥がじくじく痛む。そんなオレに対しても、支倉は容赦がない。 「そっか。優しくていいやつが相手なら、利用したところで罪悪感はないってか」  激昂するでも怒鳴り散らすでもない、けれどそこには静かな怒りが込められていた。  女に対して、支倉がこのような態度を取るのは珍しかった。支倉はいつだって、同年代より落ち着いていて。男友達といるときでさえ、本気で怒ったり、悲しむところを見たことはなくて。 「………っ、そうでもしなきゃ支倉くん、普通に告ったってこっち見てくんないじゃん!」 「普通に()ってくれた方がまだマシ」  支倉がピシャリと言い放つ。しばらくして、女が泣きながら走り去る音が聞こえた。  テメェが泣くのかよ。  フラれた傷より何倍もえげつない痕を他人に残しておいた上で、自分のために泣くのか。  支倉はいつも、皆の注目の的だった。女には勿論、男友達にも恵まれていて、周囲から常に好かれていて。愛され受け入れられる環境は、そうでない者からすれば羨ましく、そして遠い。  雲の上。高嶺の花。  けれど。  それは決して、支倉が意図して形成された環境じゃない。 「………はやま。聞いてた?」  これも、小狡く待ち伏せしようとした罰だというのだろうか。もうひとつの、男の足音が近づいてきた。  
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