蔵のなかで

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 (いや、無事じゃナイか)    もう自分は向こうの世界で死んだも同然なのだろうから。    何かのSF小説で読んだことがある。    (ニュートリノ、とか言ったっけ)    その小説は唱えていた。タイムスリップは理論上可能だ、と。    ニュートリノは量子の世界で存在するといわれる極小の粒子。    (たしか・・)  電磁波のエネルギーによって時空間に一点の穴を開けて。    ある加圧をもって人体を通過させたニュートリノをその穴へ送りこむ。  それによって、通過の際にニュートリノがコピーした人体の情報は繋いだ時間の向こうがわへと伝えられ、    元の世界での肉体は、ニュートリノから受ける衝撃によって破壊されるが、  コピーが送られた向こうがわの世界において、その肉体は”再生”される。    (ていうか時空間だとかニュートリノを活用するだとか・・)    所詮SFだと思って読んでいた。    だが今、冬乃はタイムマシンさえ乗らずに実際に時を越えて、140年もの昔の世界に存在している。    冬乃がどういった事象のうえでここへ来たのか冬乃には知りようもない。    だが。    (何故、私の体に、起こったの?)  
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