【 第一部 】 平成十二年夏、東京

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 「うそくさ・・」  「でもぉ、これ口コミだから。身につけてればいいだけだしぃ、夢でくらい逢えるかもしれなくない?」  「あのね口コミ言ったって、情報操作でどうにでもなるの」  「うわ・・さむ・・」  「それで千秋いきなり奇跡とか言い出したわけ」  「もイイよ何も言わないからぁ」  むくれる千秋についに苦笑して冬乃は、下駄箱から靴を落として上履きをしまった。  「それよかこれからどぉする?」  「あー。さっきね電話でぇ真弓きょーバイト休みになったって、うちら待つってゆってた」  「どこ、ムック?」  「知んない。渋谷ついたら電話してって」  「アタシいま香水切れてんだよね、ドンク寄れない?」  「寄るー」  返しながら先に外へ踏み出した千秋が、ふと、  「雨ぇ?」  と顔をもたげた。  「マジ?」  続いた冬乃が空へ手をかざす。確かに僅かな雨粒を手の平に受けて。  「夜には止むといいけど」  冬乃の声は急に起こった風にかき消された。
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