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禁忌への覚悟
「・・おまえがどうしても沖田家を継ぐつもりがないのなら、いっそ俺の養子に入って、俺の跡を継いでくれないか」
今日は日中に雨が降って。一日屋内での仕事に勤しみ、風呂を終えて八木家離れへと戻ってきた冬乃は、
障子を開けかけた時、中から聞こえてきた近藤の声に、どきりと手を止めていた。
(・・・養子?)
沖田家は、
沖田が幼い頃に、長女の迎えた婿が家督を相続している。
沖田は息子のいる姉達に遠慮し、長男でありながらも、成人後も姉婿から家督を継ごうとはしなかったともいわれる。
(それもあるだろうけど、沖田様は・・)
縁側で佇んだところで冬乃の存在など気づかれているだろう。引き返すのもどうかと、冬乃は意を決して障子を開けた時、
「ご冗談を」
沖田が近藤へ困ったような声で返答した。
「俺じゃ先生の跡は継げませんよ。御存知でしょう」
「・・・」
冬乃は気まずさに、そっと障子を閉める。
「おまえは、やはり、それだけはどう頼んでも譲らんのだな・・」
冬乃が入ってきたことへ気を向けることなく近藤が会話を続けた。
「はい」
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