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――つまり、その一生を賭して、有事の際には近藤の『盾』となり。身を挺して、近藤の命を護ろうと在る事を。
そんな沖田が、近藤の跡目になれるはずはなく。
沖田がのちに病の床に臥しても、彼のその想いは当然変わらなかっただろう。
そして命がある限り、或いは近藤の盾となりえる機会は残っている以上。どれほど病に身が蝕まれようが、沖田が自らの手で肉体の苦しみを絶ち、その一縷の機会を捨て去るはずがなかった。
(だからこそ、最期まで、近藤様の傍に居たかったはずなのに)
病の床に置いて行かれ。
それがどんなに、近藤達にとっては、沖田の病状が或いは療養の末に快復してはくれないかと、彼らは彼らでその一縷の望みを託したが為の別離であったとしても。
沖田は、戦地へ共に行くことで、己が足手まといとなるだろう事への懊悩と、近藤の傍に在りたい想いとの狭間で、どれほど引き裂かれるような葛藤に苦しんだことだろうか。
(この先、私に出来ることは、結局なにも無いの・・?)
急襲した、その神経を抉られるかの痛みに。冬乃は首を振った。
(・・・そんなことない)
冬乃が、ここに来れたことが運命ならば
(何か出来ることが、きっとあるはず)
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