禁忌への覚悟

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   やかんに汲み終え、冬乃は立ち上がった。  障子に手をかける前に一瞬耳を澄ましたが、もう会話は聞こえてこなかった。冬乃は障子を開けて中へ入り。    奥を見やれば、二人はそれぞれ本を広げていた。  冬乃は幾分ほっとして、すでに火の熾されている火鉢の上へ、五徳を刺してやかんを乗せる。  湯が沸くまでの茶葉の用意に、押し入れの棚へと向かった。    茶葉を手に戻りながら冬乃は、沖田のほうをそっと見る。    (必ず、みつけてみせる)      冬乃に、出来ることが、何かを。          障子の外が騒がしくなった。  原田の陽気な声がする。冬乃は盆に手を伸ばし、温める湯呑の数を増やした。      
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