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礼の女人とは、安藤とお付き合いしている未亡人だろう。
「渡されてから大分遅くなってしまったでござるが、これをお納めくだされ」
安藤がそう言って、紐を手渡してくれる。
「扱きです。普段お使いでないようなので」
(しごき?)
「あれからすぐ大阪まで行っとりまして、すっかり遅くなってしまったでござるが」
「いえ、こんな素敵なものを戴いてしまって宜しいのですか・・?」
「お土産を提案してくださった礼だと申しておったでござる」
冬乃は手の内の、その美しい刺繍を纏う紐を見つめた。
「有難うございます。でもあの、こちらはどのように使うのでしょうか・・」
「扱き・・を、まさかご存知でらっしゃらぬのか?」
安藤の驚愕した顔に、冬乃はこくりと頷く。
「・・女人によっては好まず全く使わない方もおるようですが、それでも、ご存じないというのも珍しい」
安藤は冬乃の、未来から飛んで来た云々の騒ぎを知らないようだ。
冬乃が畏まっていると、
「その扱きを腰に巻いて、裾の長さを調整いたす」
説明してくれた。
(あ、そういう物だったんだ)
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