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扱きを丁寧に行李に仕舞い、冬乃は女使用人部屋を後にした。
建物の庭に面した副長部屋では、時おり声がする。
会話の内容までは聞き取れないが、近藤、土方、山南が会話している様子だ。
(お茶でもお持ちしたほうがいいのかな?)
そう思い立って冬乃が立ち止まった時、
これまで聞こえていた彼らの声とは、まったく別の話し声がした――それはひどく懐かしくもあり、あまりにも聞き慣れたものでもあり、
冬乃の心を刹那に掻き乱した――――母の声だった。
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