禁忌への覚悟

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     (やっぱり戻れてないか・・)    睡眠不足だったおかげで、昨夜はしっかり寝つけた冬乃は、朝起き出して変わらぬ見慣れた自室の天井の下、目覚めてすぐに意識に甦る不安や恐怖に、一瞬きつく目を瞑った。    朝起きたら幕末へ戻れていたら、と夜寝る前に少しばかり期待してみたのだが。駄目だったようだ。      (ほんとに、どうしたら、戻れるの)    失意のうちに学校へ行き、教室に向かいながら。ここでは只の週明けなのに、あまりに久しぶりな感覚と最早生じている違和感に、半ば苦笑してしまう。      授業が始まっても当然上の空で。暑い熱気に陽炎のようなものが見える窓の外を眺めながら、  今頃、沖田達のいる京都は寒くてたまらないのだろうかと、ぼんやりと考えた。      (・・・あ、でも)    平成での時間の流れと、向こうでの流れは、激しく差があったではないか。    (こっちで、もう一日半くらい・・?)  幕末では、どのくらい経ったのだろう。      (もう逢えないなんてこと・・・ないよね・・)    既に幾度となく、胸に急襲するその恐怖に。冬乃は、慌ててまた思考を閉ざした。      昼休みのチャイムとともに、冬乃たちは立ち上がる。     
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