禁忌への覚悟

21/281
前へ
/1405ページ
次へ
 「今日はお弁当あるから」  のみものだけ。と千秋が、財布を手にパンを買いに外へ出る冬乃と真弓についてくる。      「沖田さんに、逢いたいよね・・」    昼時で近隣の会社員たちで溢れる交差点を渡りながら、真弓が冬乃の心を代弁するように呟いた。    「・・うん」  素直に、冬乃は頷く。    「きっとまた逢えるよ!」  励ましてくれる千秋に微笑み返して冬乃は、千秋の向こうの、ビルの合間に差し込む陽光に目を細めた。    (本当に、また、行って戻ってきて・・そうやって繰り返せたらいい)    だけど、  いつまで    幕末での時間の進みは、平成での進みに比べて異常に早かった。  だからたとえ、行き来が叶ったとしても、    (それですら、)    いつかは先に、  幕末での、沖田達の時間は途絶えてしまう。    (苦しいことにはかわりない)  また早く幕末へと戻れなければ、沖田達の時間の終焉に、間に合わなくなると。  行き来を繰り返せたとしても、繰り返せば繰り返すほどに、いつかそんな焦燥に苛まれることになるだろう。      「・・・あれって」  不意に上がった真弓の声に、冬乃の彷徨っていた思考は戻された。    「あ、白衣のイケメン!」     
/1405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9819人が本棚に入れています
本棚に追加