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「今日はお弁当あるから」
のみものだけ。と千秋が、財布を手にパンを買いに外へ出る冬乃と真弓についてくる。
「沖田さんに、逢いたいよね・・」
昼時で近隣の会社員たちで溢れる交差点を渡りながら、真弓が冬乃の心を代弁するように呟いた。
「・・うん」
素直に、冬乃は頷く。
「きっとまた逢えるよ!」
励ましてくれる千秋に微笑み返して冬乃は、千秋の向こうの、ビルの合間に差し込む陽光に目を細めた。
(本当に、また、行って戻ってきて・・そうやって繰り返せたらいい)
だけど、
いつまで
幕末での時間の進みは、平成での進みに比べて異常に早かった。
だからたとえ、行き来が叶ったとしても、
(それですら、)
いつかは先に、
幕末での、沖田達の時間は途絶えてしまう。
(苦しいことにはかわりない)
また早く幕末へと戻れなければ、沖田達の時間の終焉に、間に合わなくなると。
行き来を繰り返せたとしても、繰り返せば繰り返すほどに、いつかそんな焦燥に苛まれることになるだろう。
「・・・あれって」
不意に上がった真弓の声に、冬乃の彷徨っていた思考は戻された。
「あ、白衣のイケメン!」
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