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瞬時に反応した千秋の視線の先。例の医大生が、歩いてこちらのほうへ向かってくるのが見えた。
(そういえば、この近くの大学だったっけ)
脳裏に思い出した、そのとき。
冬乃の目の前は、渇望していたあの霧に再び覆われ。真っ白になった。
・・・さん、
・・冬乃さん
(ああ・・・)
沖田様
(ただいま)
「冬乃さん」
はっきりと、聞こえた愛しい声に。
冬乃は、うっとりと目を開ける。
苦笑したような表情を浮かべた沖田が、見下ろしていた。
「それが未来での服装?」
刹那に落ちてきた問いに、冬乃ははっと体を見やる。
(あ・・・)
そうだった。
今回は、制服を着ていたのだった。
手には財布。
(ん?)
手に握り込んでいる財布に。冬乃は目をやった。
(・・え?)
「未来では、すごい恰好してるんだね」
財布の存在に瞠目している冬乃の上では、見下ろす沖田の苦笑が止まない。
冬乃はおもわず頬を紅潮させて沖田を見上げる。太腿と二の腕まるだしなのだ。この時代ではありえない恰好なのは、当然承知している。
もはや冬乃まで苦笑してしまいながら起き上がって見回すと、土方もいた。
「す、」
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