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副長部屋だ。土方の眉間の皺から察しなくとも、あいかわらず土方の文机が着地地点だった様子。
「すみません・・またお邪魔してます・・・」
(ていうか、なんか暑・・!?)
手にしている財布を太腿に置きながら、冬乃は障子の外を見やった。
先程学校の窓からみえたものと同じ陽炎が、庭先を揺らめいている。
(夏・・・・?!)
「今回は長かったね。もう帰ってこないかと思った」
微笑っている沖田へ、冬乃は呆然と視線を戻した。
「い、ま・って・・何年何月、・・何日ですか」
どこか恒例となっているその質問を渡して。
冬乃は、くらくらと眩暈を感じながら、沖田の答えを待つ。
「元治元年、六月一日」
「・・・・」
声を。取り戻すのに、冬乃は暫しの時を要した。
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