【 第一部 】 平成十二年夏、東京

4/10
前へ
/1405ページ
次へ
 「私ハヤトにふられたの。俺のコト中途半端にしか想ってないのわかるって。ふざけんなって。・・私さ、ハヤトのコト本気になれると思ったけどダメだった」  コンビニで買った冬乃の傘が、風に押されて揺れる。  「もうネほんとイイ加減にしなきゃって思った」  「じゃぁ決心ついたんだ?現実の男を見るって」  「違う。もう誰かとつきあってみたりするのやめるってコト」  「はぁー?」   傍を通りかけたサラリーマン風の男が真弓の声に驚いて、三人を見やって通り過ぎていった。  「ソレってぇ一生沖田サン愛してるかもってことになんない?」  冬乃は答えられずただ傘を軽く引いた。雨足が強くなっている。  「千秋はソレいいと思う」  呟いて千秋が、二人を促すようにやや歩きだした。  「冬乃が決めた事って、よーするに好きになれそーってだけのキモチで付き合い出すのはやめるって事になるじゃん」  「まぁ・・」  「誰かを好きでもさぁ他の人にキモチ行くとき行くんだし」  「・・・まさか千秋いま、他の男に目行ってたりしてない?」  千秋は立ち止まってしまった。  「真弓、あんった超スルドイよォ」  「え、マジで?・・」  「にゃん」  「ゴメン、じゃ私そろそろ行くわ」  冬乃は手を振る代わりに傘を揺らし、戯れる二人を置いて駅へと向かい出した。
/1405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9820人が本棚に入れています
本棚に追加