9796人が本棚に入れています
本棚に追加
今すぐ風呂に入りたい想いでいっぱいなものの、今はただ着替えて頭を拭いて待つしかない。
「冬乃さん」
よろよろと立ち上がって縁側に這い上がった冬乃の背後で、いつのまに来ていたのか、傘を手に沖田が、冬乃を注意深く見つめており。
冬乃は振り返ったまま、動きを止めた。
「何があったの」
明らかに尋常ではない様子の冬乃に、酷く心配そうな、不安げとすら取れる表情で、沖田が尋ねてきて。
「あ・・、・・」
冬乃の体の芯は、未だ震えていた。
咄嗟の返しも出てこない冬乃に、
ますます訝った沖田が、
「冬乃さん」
抑揚のない声で、促してきて。
「・・・出かけた帰りに、・・雨に降られてしまったので・・。」
漸う絞り出した冬乃の返事に、
だが、沖田が微かに眉を顰めた。
「それだけじゃ、ないよね」
「袖に血が付いてる」
沖田の言葉に、冬乃は、はっと袖を見やった。
最初の男の腕を斬りつけた時に、付いてしまったのだろう。
「・・道で暴漢に襲われそうになりました」
冬乃は正直に告げた。
「男の差していた脇差を奪って・・斬りつけて逃げてきました」
冬乃の目を見つめていた沖田が、ふっと息をついた。
「無事、なんだね・・?」
「え」
最初のコメントを投稿しよう!