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確認された言葉の意味を、冬乃は咄嗟に思い巡らして。
沖田の視線が、冬乃の太腿が露わなほど乱れきった着物の裾を捉え。
まもなく冬乃は理解して。慌てて頷いた。
「もちろんです・・っ」
安堵の表情を浮かべた沖田を、冬乃は胸奥を掴まれるような想いで見上げた。
「人払いしててあげるから風呂に入ったらいいよ」
続いた沖田の台詞に、そのまま冬乃は目を見開いていた。
「そんな、申し訳ないです」
夕餉の前後で、幹部の誰かしらが利用しないはずがない。
「いいから」
(沖田様・・)
「有難うございます」
冬乃は恐縮しながら、素直に頭を下げた。
思えば千代からの土産も落としてきてしまった。
それならいっそ千代と出かけていたことさえ伏せてしまえばいい。冬乃は心にそう決めると、
風呂場の軒先の石に腰かけ、冬乃が出るまでずっと番をしていてくれた沖田に、再三に礼を言いながら、
まもなく立ち上がって歩み出した彼が、先程の詳細を聞いてくるだろう時へと、構えた。
話の前にまずは風邪をひかないようにと、先に風呂へ入れてくれたのだ。
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