恋華繚乱

16/244

9729人が本棚に入れています
本棚に追加
/1404ページ
 (本当に何から何まで有難うございます・・)  温まった体で横に並びながら、洗い髪を手拭いに包ませ、冬乃は沖田をそっと見上げる。    どことなく険しいその横顔が、冬乃の視線に応えてすぐに冬乃を向いた。    「冬乃さん、貴女を護ってあげられず、怖い想いをさせてごめん」      (え・・?)    その、予想もしていなかった第一声に。    冬乃は驚いて一瞬声も出せずに歩みを止めた。    (なんで沖田様が謝るの)    「・・あの」    「次からは、」    小さく風が唸って。冬乃の持つ傘が揺れた。    「今日のような人通りが無くなる時分には、組まで使いを寄越してほしい」  冬乃に合わせて立ち止まった沖田が、そう言うと冬乃をなお硬い表情のままに見下ろした。    「次は迎えに行く」      (うそ・・・)    「そんなことっ、沖田様に頼めません・・!」    「貴女が頼むのではなく、これは俺からの頼みだ」    どうして    「俺が仕事で組に居ない時も、他の人間が迎えに行けるようにしておく」      どうして、そうまでしてくれるの      「いい?いま約束してほしい」    冬乃は戸惑って沖田を見つめ返した。    「冬乃さん」  促す沖田を。     
/1404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9729人が本棚に入れています
本棚に追加