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そんな日々のさなかだった。
「おい女中」
これまでの隊士達と明らかに感じが違う呼び止めに、
冬乃は驚いて。後ろまで来ていたその男を振り返ってまじまじと見つめた。
(この人どっかで・・)
「隊士部屋にいるから茶を持ってこい」
(・・?)
「どなたが、いらっしゃるんですか」
「は?俺に決まってるだろうが」
客人でも来るのかと思いきや、どうやら、この男は自分へ茶を持ってこいと冬乃に命令しているらしい。
箒を手に、冬乃は目を丸くした。
(なんだこの傲慢男)
どこかで見たことがあるのだが。
「・・あ」
まもなく冬乃は気が付いた。
佐久間象山の息子だ。冬乃の記憶にある象山の写真にどことなく目元が似ている。
昨年、暗殺された象山の仇討の為に、名を改めて三浦敬之助と名乗り、新選組に客員待遇で入隊していた。
歳は冬乃と同じくらいなはずだが。
(たしか性格に難点があったって後世に伝わってたけど・・・なるほどね)
おもわず苦笑してしまった冬乃を前に、三浦は眉間を狭めた。
「何がおかしい」
「すみませんが、」
冬乃もこんな男に対しては、人が悪い。
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