恋華繚乱

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 「どうぞ厨房へお入りいただいて構いませんから、ご自分で好きなだけ用意なさってください」    言い放って冬乃は背を向けた。    「貴様!」    ・・まあ。それで済むとも思ってはいなかったものの。    冬乃はもう一度向き直った。    「なにか?」    「俺を愚弄するのか!俺に厨房なんかに入って茶を作れというのかよ!」    「そうですけど」    「このっ・・」    いきなり平手が飛んで来て。冬乃は軽く飛び下がった。    「お怒りのところすみませんが、貴方にお茶を用意する義理はありません」    平手打ちを難なく避けた上に冷静に拒否してくる冬乃に、三浦は少し面食らったようだった。    「く、組の女中だろうが!」  「ええでも、貴方の女中ではありません」  「・・・!」      以前に沖田個人に、なかば好意から、食事を用意しますと申し出た時、自分の小姓じゃないのだからと断られたことを冬乃は思い出していた。    中核幹部の沖田でさえ、使用人からの個人的な給仕を受けようとしなかったのに、  なぜ客員扱いとはいえど平の隊士の三浦に、茶を用意して持っていかなきゃならないのか。      冬乃だけでない。お孝や他の使用人がこの先、彼に面倒をかけられてもたまらない。       
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