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「御存知なかったのでしたら、以後お含みおきください。組の使用人は、誰か隊士の方個人の使用人ではございません」
なかば睨むような眼差しになりながら冬乃は、声に気迫を籠めて三浦を見返した。
(平手打ちかましてきたのは、無かったコトにしてあげるから)
理不尽にいきなり殴られかけるいわれも無い身としては、腹立たしいものの。当たっていなかったから、まだ良しとしようと、冬乃は自身に言い聞かせる。
「もう宜しいですか?」
「・・・」
三浦は答えなかったが、明らかに不服そうだった。
仕事が山済みだ。冬乃は返事を待たず軽く会釈をしてみせ、再び背を向けようとした。
「ッ、待て無礼者!」
だが、その悔し紛れな呼び止めに。
(ていうか、無礼者って)
冬乃は呆気にとられて。
「たかが女中のくせに無礼だろ!詫びろよ!」
「・・貴方に雇われてるわけじゃないですから、無礼な言動してるつもりは毛頭ありません」
「な、なんだと!?」
「何の騒ぎ?」
つと塀の向こうから顔を出したのは蟻通だった。
(あ)
「どうしたの冬乃さん・・と三浦君?」
蟻通が驚いた様子で冬乃と三浦を見比べて。
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