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「っ・・・!」
三浦が答えずにくるりと踵を返して、あっというまに歩み去った。
冬乃は息をついて。蟻通に向いた。
「お騒がせしてすみません。声かけていただいて助かりました」
「大丈夫なの?あの子、ちょっと問題あるからね・・もし何かされたなら、」
「いえ、」
冬乃は首をふってみせた。
「行き違いがあったようで、・・もう次は大丈夫だとおもいます」
「そう」
微笑む冬乃の様子からとりあえず安心したらしい蟻通が、小さく相槌を打って。
「それと最近、皆が貴女を」
そして何か言いかけて蟻通は一瞬、次の言葉を考えるように留まり、目を逸らした。
ひゅう、と春の風が二人の間を吹き抜ける。
蟻通は、冬乃を再び見据えて。
「誰が、貴女と付き合えるか競ってるみたいだから・・中には強引なのもいるかもしれないので、気をつけて」
(あ・・)
冬乃は。頭を下げた。
「わかりました・・有難うございます」
「忙しい・・よね。じゃあ俺はこれで」
ちらりと冬乃の手にある箒を見やって、蟻通がそんなふうに気遣ってくれるのへ。
冬乃は、改めて礼を返すと、去ってゆく蟻通を見送った。
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