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「濱田さんの良い店って、あまり女性向きではないでしょう? ただの酒好きならともかく、彼女だって気の利いたところで飲む方が好きだと思いますよ?」
「ううむ、気の利いた所ねぇ……それはたとえば、どんな所だ?」
濱田は、早川を誘うつもりなのだろうか。
「そうですね……ホテルのラウンジとか、あとは女性好みのカクテルやオードブルがあって、ムードのある音楽が低く流れているような……」
そこまで言って、神崎はまた頭を抱えた。
「俺にそれが解れば、苦労しないんですよ。ったく、どうしろって言うんですか!」
「な、なんだなんだ。そんなに悩むようなことを聞いたつもりはないぞ」
濱田が驚いて身を引くと、神崎は慌てて弁明する。
「すみません、違うんですよ。実は兄から頼まれ事をされたんですが……」
「頼まれ事?」
身を乗り出し興味深そうな顔をする濱田に、神崎はやれやれと溜息をついた。濱田は、他人の問題に首を突っ込むのが大好きだ。
「交通課の女子に人気のある店を、調べて欲しいって言うんです」
「そんなの調べてどうすんだ?」
「兄の会社の若い連中と、食事の場をセッティングしたいそうなんですよ……」
「おおっ、合コンってぇヤツかっ! それなら早川に聞いてみたらいいじゃないか?」
「それは……」
途端に神崎は口ごもった。
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